在宅酸素療法~在宅酸素療法導入の流れ・費用について~
当ブログでは病気に関する情報発信を行っています。今回は在宅酸素療法導入の流れについてお話します。
在宅酸素療法導入の処方について
薬の処方と同様で、酸素の処方のためには原則月一回受診していただく必要があります。
在宅酸素療法の適応疾患や適応基準については前回のブログでも触れましたが、肺気腫や間質性肺炎など、薬剤を使ってもそれ以上の改善が見込めず、酸素吸入を必要とする慢性の呼吸不全がある場合に在宅酸素療法の適応となります。
保険適用基準
酸素吸入で症状の改善が見込める酸素の値は以下です。
動脈血酸素分圧(PaO2)が60mmHg以下、または経皮的酸素飽和度(SpO2)が90%以下
SpO2は簡単に測定できますが、動脈血酸素分圧(PaO2)は基幹病院での検査が必要となります(速やかに検査に回す必要があるため)。
導入までの流れ
在宅酸素療法で使用する吸入機器、酸素ボンベなどは購入ではなく医療機器メーカーからのレンタルです。健康保険の適応上、月一回は受診をする必要があります。
在宅酸素療法を開始する際、当院から医療機器メーカーへ連絡し、自宅へ吸入機器を搬送してもらいます。
機器の設置、操作の説明、機器の緊急対応、定期メンテナンスは医療機器メーカーが行います。故障やメンテナンスによって患者さんの負担額が変わることはありません。
実際の酸素吸入
多くの場合、機械にチューブをつなぎ、酸素を鼻から吸入する鼻カニューラを装着します。外出の際は、軽量の酸素ボンベを用います。安静時の酸素流量、動く時の酸素流量を決めて処方しますが、しんどいからといって酸素流量をあげるとCO2ナルコーシスという致死的な病態を引き起こすこともありますので、勝手に酸素流量を調整しないことも大切です。
外出時の酸素ボンベを持ち歩く方法として、キャスターのついた引っ張るタイプのものや手押し車タイプ、筋力のある方ならリュックタイプなどあります。その方に合った酸素療法を見つけたいと思います。
また、酸素は着火すると燃えやすいため、喫煙は厳禁、ストーブやガスコンロなど火元にはご注意していただく必要があります。
費用負担
毎月、再診料や薬剤費などと別途以下の費用がかかります。おおよその目安です。
1割負担:¥7700ほど
2割負担:¥15500ほど
3割負担:¥23100ほど
高額医療制度の申請
身体的に酸素療法が必要な方でも経済的な理由から導入を見送る方もおられます。
高額医療制度や身体障害者の認定など、負担軽減に使える制度があります。
まとめ
今回は在宅酸素療法の処方、実際の費用負担についてお話しました。
どうしても費用や見た目上の理由から在宅酸素療法に踏み切れない患者様も多くいらっしゃいます。しかし、在宅酸素療法で身体的な負担が軽減され、外出頻度が増える可能性があります。慢性的な息切れのある患者様やそのご家族で、在宅酸素療法についてご質問のある方は一度お気軽にご相談ください。