在宅酸素療法~対象疾患・治療の目的・効果について~
当ブログでは病気に関する情報発信を行っています。今回は在宅酸素療法についてお話します。
在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy:HOTホット)とは
文字通り、自宅で酸素を吸入する治療です。
室内空気は窒素が約78%、酸素が約21%、アルゴンや二酸化炭素などその他の成分が約1%含んでいます。
肺や心臓が悪くなると、酸素の取り込みや循環が悪くなります。21%の酸素下では十分に全身に酸素がいきわたらず、疲れやすくなったり、息切れのため動くことができなくなります。
そこで必要になるのが在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy:HOTホット)です。
対象疾患について
「体に酸素が足りていない方」が在宅酸素療法の対象の方となります。酸素の取り込みが悪くなる呼吸器疾患、取り込んだ酸素の循環機能が悪くなる心疾患が主な適応となります。肺炎や急性心不全など、急に酸素療法が必要になった場合は入院での治療となります。肺炎は抗生剤治療で元の呼吸機能に戻り酸素吸入を必要とせずに退院となることが殆どですが、肺気腫や間質性肺炎など、薬剤を使ってもそれ以上の改善が見込めず、酸素吸入を必要とする慢性の呼吸不全がある場合に在宅酸素療法の適応となります。
・呼吸器の病気:酸素の取り込みが悪い
肺気腫、間質性肺炎、肺癌、結核後遺症など
・心臓の病気:取り込んだ酸素の循環機能が悪い
慢性心不全(心臓弁膜症、不整脈、心筋梗塞後、心筋症など)
適応となる検査結果
酸素吸入で症状の改善が見込める酸素の値は以下です。
動脈血酸素分圧(PaO2)が60mmHg以下、または経皮的酸素飽和度(SpO2)が90%以下
SpO2は簡単に測定できますが、動脈血酸素分圧(PaO2)は基幹病院での検査が必要となります(速やかに検査に回す必要があるため)。
低酸素血症の問題点
低酸素血症では何が問題なのかをお話します。十分な酸素が体にない場合、もっと酸素を取り込もうと息があがり、心拍数も上昇します。それでも酸素を取り込めない場合はそれ以上動くことができなくなります。腎臓や肝臓など、体のあらゆる臓器が生きていくうえで酸素を必要としています。
マラソンをすると息があがりますよね。もっと早く走りたくても、息があがってそれ以上走れないと立ち止まります。慢性呼吸不全がある方は、ただ歩いてスーパーに行くことがマラソンと同じ状態になります。外出もおっくうになり筋力も低下し、さらに動くことが困難となる、という負のスパイラルとなる傾向にあります。
在宅酸素療法に期待できる効果
では、在宅酸素療法によって、酸素不足を改善するとでどのような効果が期待できるのでしょうか。
・息切れ・動悸の改善
・長く歩くなどの運動能力の改善
・入院回数の低減
・記憶力・注意力低下の改善
・心臓への負担を軽減
など、様々な効果が期待できます。この中でも心臓の負担を軽減することで、肺高血圧症や心不全、高血圧症などを予防することができます。
まとめ
今回は在宅酸素療法についてお話しました。
酸素ボンベを引っ張って歩くため、どうしても他人の目が気になって二の足を踏まれる方が多くいらっしゃいます。息切れで家に引きこもりがちになると、筋力が低下してさらに息切れが悪化するという悪循環になることが多いです。
ただ、酸素吸入下では明らかに歩行時間は長くなり、身体への負担が軽減します。また、入院回数も減り、より元気に日々の生活を送ることができます。対象となる慢性呼吸不全、慢性心不全がある方はできる限り積極的に検討いただきたいと願っています。
次回のブログでは、在宅酸素療法を処方するまでの流れや、費用負担などについてもお話ししたいと思います。