気管支喘息①〜病気について、診断について

当ブログでは医療情報の発信を行なっています。正確に病気についての知識を持ってもらうことで、より一層しっかり治療に取り組んでいただくことが、健康への近道であると考えています。

今回は気管支喘息についてお話しいたします。喘息は大変ありふれた病気ですが、専門医と非専門医によって診断や治療に大きな差が出る分野です。喘息でお困りの患者さんは是非ご一読ください。

気管支喘息ってなに?

気管支喘息は、急に気管支(肺の中の空気の通り道)が狭くなってしまい、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」して呼吸が苦しくなる状態(発作)を繰り返す病気です。

気管支喘息では、気管支に炎症が起こっています。この炎症のために簡単な刺激(タバコや花粉、風邪、ほこり、冷気、大声など)が入っただけでも気管支が狭くなる発作が起こります。症状として息苦しさ、咳、痰などが起こります。

そのため、炎症を治さない限りいつまでも発作が出てしまいます。さらに、長く炎症が続いてしまうと気管支自体が狭い状態で硬くなって元に戻らなくなります。専門的には「リモデリング」といった状態に陥ってしまい、こうなると治療がとても難しくなります。

気管支喘息って治るの?

一度発症してしまうと、基本的に完治はしないと言われています。子供の頃からの喘息の方もおられますが、大人になってから発症してしまう方もおられます。特に「咳喘息」という頑固な咳が続く病気を放っておく(吸入治療をしっかりしない)ことで気管支喘息になってしまう方が少なからずおられます。

完治はしませんが、しっかりコントロールすることは可能です。仮に風邪をひいても、大掃除をしても、花粉の時期になっても、一切喘息の症状は出ない という状況に持っていくことは可能です。むしろ、その状況までしっかり治療をする(コントロールをつける)ことが大変重要になってきます。そうでないと、炎症が残っていることになるので、少しずつ気管支が狭く硬くなってしまうからです。

詳しくは次のブログ(気管支喘息の治療について)でお話ししたしますが、気長な治療が必要です。

気管支喘息の診断①

気管支喘息の診断は実は結構難しいです。非専門医の先生に「喘息の気(け)がありますね」と言われたことのある方をたくさん知っていますが、大きな声では言えませんがそのうち結構な割合で実際喘息ではなさそうな方がおられます。

気管支喘息と間違って診断されてしまうと、将来的に困ることがあります。大きな病気の診断等の時に「造影剤」を使用した検査(CTやMRI、カテーテルなど)をすることがあるのですが、気管支喘息と言われたことのある方はそれらの検査が気軽にできない(造影剤が重篤な喘息発作を誘発することがあるため)のです。実際に気管支喘息でそれらの検査が必要な方には事前にステロイド等を予防投与して検査を行うのですが、やはり検査のハードルが上がってしまいます。

ですので、気管支喘息の診断はしっかり専門医につけてもらう方が良いとされています。

また、タバコをたくさんすっておられた方(COPD、肺気腫の方)は気管支喘息とほとんど同じような異常を肺や気道に起こします。これは専門的にも見分けが難しく、また気管支喘息とCOPDはよく合併することがわかっています。これをACO(喘息COPDオーバーラップ)と言います。

気管支喘息の診断②:実際の診察、検査

喘息は一つの検査だけで診断をすることはありません(これは喘息に限らず、多くの病気でそうです)。診察や検査を組み合わせることで診断につなげます。

・聴診

気管支喘息の診断に一番大切なのは聴診です。聴診で特徴的な音(Wheezeと言います)が聞こえたら、喘息の可能性が極めて高いです。ただ、心臓発作(心不全)でも同じような音が聞こえます。また、6歳未満の小児ではそもそも気管支が狭いので、喘息でなくてもちょっとした風邪でwheezeが聴こえてしまうこともあります。

・病歴(問診)

次に大事なのは病歴(問診)です。やはり喘息はアレルギー疾患なので、季節によって症状が変わったり、一日の中でも症状の変化が大きく出ることが多いです。朝方に息苦しくなる、咳が出ると言われると喘息の可能性が高くなります。その他にも過去の病気ご家族の病気も大事な情報になってきます。

もちろん検査も行います。喘息の診断で重要な検査は、FeNO(呼気中一酸化窒素濃度測定)とスパイロメトリー(呼吸機能検査)です。

・FeNO

FeNOは10〜12秒間、息を機械に向けてゆっくりフーっと吐き続けることで検査します。これは気道(気管、気管支)のアレルギーの度合いを数値で見ることができます。子供からお年寄りまで、比較的簡単に検査可能です。この数値と聴診、問診を組み合わせることで診断につなげます。

・スパイロメトリー(呼吸機能検査)

スパイロメトリーは、肺活量などを見る検査です。「息を吸う」機能を見るのが肺活量。「息を吐く」機能を見るのが1秒量・1秒率です。喘息は「息を吐く」機能が落ちる病気ですので、1秒量・1秒率が低いと喘息の可能性が高くなります。また、まずスパイロ検査を行い、喘息発作の時に使う吸入を行い、その後もう一度スパイロ検査を行うことで1秒量の差を見る検査(可逆試験)を行う場合もあります。喘息であれば吸入をすることで「息をはく」機能(1秒量)が改善します。

・その他

年齢やタバコの喫煙状況によっては、心臓のチェックや喘息以外の肺の病気のチェックのためにレントゲンやCT、採血を行う場合もあります。

診察や検査で、はっきりと喘息かどうか断言しにくい場合もあります。その場合は、喘息治療の時に使う吸入をしばらく試してみて、その効果も踏まえて診断を行います。これを「診断的治療」と言います。

まとめ

今回は気管支喘息の病気の説明と、診断についてお話しいたしました。

  • 実際に喘息の人に間違って「喘息じゃない」 と言うこと
  • 実際には喘息じゃ無い人に間違って「喘息です」と言うこと

どちらも患者さんにとっては一大事です。

繰り返しになりますが、上に挙げた検査ひとつだけで喘息の診断(もしくは喘息じゃ無いですと診断)することはできません。聴診や問診、検査、採血などを組み合わせることで慎重に診断を行うことが重要です。

当院では上に挙げた検査は全て行うことができます。喘息と言われたことのある方は是非一度ご相談ください。

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気管支喘息についての続き(気管支喘息②〜治療について)はこちら

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