症状から探す:鼻水、鼻詰まり

当ブログでは、患者さんのお困りの症状から、どのような病気が考えられるかについての情報発信を行っております。 今回は鼻水、鼻詰まりについてお話しいたします。

鼻水とは

痰についての過去記事でもお話し致しましたが、気道(鼻も気道の一部です)は粘液によって守られています。この粘液は、外から吸い込んだ細菌やウイルス、ほこりなどの異物を引っ掛けて体外にかき出す役目をになっています。これが鼻水です。

鼻水の色によって考えられる原因が変わります。

  • 白色、透明→アレルギー性の鼻水
  • 黄色、緑→感染にともなう鼻水

ただし例外も多いですのであくまで目安です。

ちなみに「鼻も気道の一部(One airway)」というのは近年の喘息治療のキーワードの一つです。鼻の治療をしっかり行うことで、喘息が劇的に良くなる方もおられます。

鼻水の原因

こちらも、痰の原因と同様に、異物が鼻に入ってきた時に増えます。

よくある原因として

  • 風邪(ウイルス感染)
  • アレルギー(花粉症など)
  • 副鼻腔炎
  • 好酸球性副鼻腔炎
  • 本態性(血管運動性)鼻炎
  • 薬剤性鼻炎、点鼻薬性鼻炎

が挙げられます。それぞれ解説していきます。

風邪(ウイルス感染)

ウイルスが鼻を含めた気道に感染することでその防御反応として鼻水が増えます。

この感染に伴う鼻水や鼻詰まりにはほとんど薬が効かないという特徴があります。

ただし、アレルギーの素因がある方(花粉症や喘息をお持ちの血縁者がいる等)ではアレルギー薬が効く場合もあります

風邪の過去記事でお話しした通り、ウイルス感染は日にち薬が基本です。その回復を手助けし、症状を緩和する方法として漢方という手もあります。症状に合わせた西洋医学の投薬に加えて、漢方を使用することでより症状を緩和する方法をおすすめすることもあります。

アレルギー(花粉症など)

花粉症に代表される、アレルギー性鼻炎です。アレルギーを引き起こす原因物質をアレルゲンといいます。アレルゲンが鼻や目に入ることでアレルギー症状として鼻水や鼻詰まり、くしゃみ、目のかゆみ等が起こります。

アレルギーは採血で調べることも可能ですが、その結果の解釈には少し注意が必要です。つまり、採血の結果がプラスだった=アレルギーがある というわけではないのです。

アレルギー診療はあくまで患者さんのお話し(病歴)をしっかりお伺いし、症状が強く出る時にどのようなアレルゲンを体内に取り込んだか、を詳しく調査する必要があります。この採血は、そのヒントに使うために行います。

また、最近はアレルギーを「治す」ことができるようになってきました。舌下免疫療法という治療法です。スギ花粉症と、ダニに対するアレルギーが対象になります。この治療を行うためには採血でアレルギーの程度を知る必要があります。(舌下免疫療法についての詳細は別記事にてご紹介予定です)

副鼻腔炎

副鼻腔という顔面や頭蓋骨にある空洞に膿(うみ)がたまる疾患です。知らず知らずのうちに副鼻腔炎をもっている方は少なくありません。

副鼻腔は鼻とつながっており、膿が鼻の中へ流れると、鼻水として出てきます。

発症4週間以内の副鼻腔炎を急性副鼻腔炎といいます。急性副鼻腔炎では、緑や黄色の鼻水が出ることが多いです。急性副鼻腔炎の9割はウイルスが原因ですので抗生剤は不要(効かない)なことが多いですが、おでこや頬が強く痛んだり、発熱する場合には抗生剤が必要になる場合もあります。

この炎症が長引いてしまったものを慢性副鼻腔炎といいます。蓄膿症という言い方をする場合もあります。膿が溜まることで慢性的な頭痛が起こったり、においがしなくなることもあります。慢性副鼻腔炎になると、鼻の中に入ってきた異物を外にかき出す機能が落ちてしまうため、漢方やエリスロシンという薬を使ってその機能を回復させる治療を行います。

好酸球性副鼻腔炎

鼻茸(はなたけ)と言われる良性のポリープが鼻の中に多発し、何度も再発する病気が好酸球性副鼻腔炎です。この病気で現れる鼻茸には好酸球という免疫細胞が多数存在するのですが、原因不明で、なかなか治らないという特徴があります。気管支喘息やアスピリン喘息(ロキソニン等の痛み止めで喘息発作が出てしまう病気)との関連があるとされています。
症状としては鼻づまりと粘り気のある鼻水、においがわからなくなる嗅覚障害に加え、耳がつまって難聴を起こすことや、喘息の発作を起こすこともあります。

本態性(血管運動性)鼻炎

アレルギー性鼻炎と同じ症状が見られるにも関わらず、検査をしてもアレルギー反応が認められない疾患です。
はっきりとした原因はわかっていませんが、鼻粘膜の自律神経に関係があると言われています。急激な寒暖差(真冬に暖かい部屋から外に出た時など)に触れたときに症状が出る寒暖差アレルギーや、タバコや化粧品の匂い、精神的ストレスなど原因として考えられています。この疾患は特に中年の女性に多いといわれているほか、高齢者に多い鼻炎(老人性鼻炎)も同じものと考えられています。

抗アレルギー薬や点鼻を使うことが多いですが、症状が治まらない場合は漢方を使うこともあります。手術やレーザーで治療する場合もあります。

薬剤性鼻炎、点鼻薬性鼻炎

薬によって鼻炎が起こることもあります。痛み止めや血圧の薬で起こることもありますが、最近増えているのが鼻水を止めるために使う点鼻薬(鼻にシュッとする薬)による鼻炎です。え?と思う方も多いでしょう。

市販の点鼻薬の多くは即効性をもたせるために「血管収縮薬」というものが入っています。これが入っていると鼻がスーッとして気持ちいいですし、すぐ鼻水が止まるのでつい使ってしまうのですが、これを3日間も続けてしまうと薬剤性鼻炎を起こしやすくなります。薬剤性鼻炎は強い鼻水や鼻詰まりがある一方、くしゃみは少ないとされています。

これの治療は、原因となった点鼻薬を中止することしかないのですが、血管収縮薬によるスーッとした気持ちよさがクセになり、止められないことが多いです。血管収縮薬の入っていない点鼻薬や飲み薬で鼻の症状を抑えつつ、我慢強く原因の点鼻薬を中止する必要があります。

まとめ

鼻水、鼻詰まりの原因とその治療について解説しました。

アレルギーに対しての治療も日々進化しています。鼻水でお困りの患者さん、喘息をお持ちで鼻水もよく出るという患者さんは是非一度当院にてご相談ください。