症状から探す:血痰、喀血、吐血〜口から血をはいた

当ブログでは、患者さんのお困りの症状から、どのような病気が考えられるかについての情報発信を行っております。 今回は血痰、吐血、喀血についてお話しいたします。

血痰、喀血、吐血の違い

  • 血痰:痰に血が混じる
  • 喀血:肺からの出血
  • 吐血:胃や食道からの出血  です。

血の出方だけでこれらを見分けることは難しいですが、喀血は咳(せき)とともにゴフッと吐くことが多いです。血の色は真っ赤で、泡が混じっていることも多いです。吐血は嘔吐のように出ることが多く、食べかすが混じっていて、血の色は黒っぽいことが多いですが、出血量が多いと真っ赤になることもあります。

血が止まりにくくなる薬(バイアスピリンやプラビックス、ワーファリン、エリキュース等)を内服している方はより出血しやすくなります。

血痰の原因と対処法

血痰の大半はウイルス感染(風邪)や肺炎などの咳に伴って気道に傷ができることで起こります。風邪のような症状に引き続いて痰に血が混じる程度の出血であれば、ご自宅で様子をみても大丈夫です。数日も経てば自然回復してくると思われます。

気管支喘息、COPD、肺気腫などの咳でも出血をすることが多いです。これらの病気をお持ちの場合は、咳の原因として喘息やCOPDが悪くなっていることが多いですので、受診をお勧めしています。

また血痰が続く場合は、肺癌や結核、非結核生抗酸菌症(NTM、MAC)、気管支拡張症などの病気が考えられますので、受診が必要です。

いずれの原因であっても、痰に血が混じる程度の出血量であれば当院でも対応可能ですので、お困りの方はいつでもご相談ください。直近2週間以内に風邪症状が出ている方は、発熱外来のご受診をお願いいたします(2022/5/9以降、当院でも発熱外来を行います)。

喀血の原因と対処法

喀血は肺からの出血ですので、肺の病気が原因です。上にも書いた、肺癌、結核、非結核生抗酸菌症(NTM、MAC)、気管支拡張症などを考えて検査をする必要があります。

まずはレントゲンやCTを行い、肺の中に何か病気がないかを探します。

CTで何もなければ、少なくとも肺の病気は心配いりません。その場合、出血の量や頻度によって、喉の奥や食道、胃を調べるための胃カメラをしていただくかどうかを考えます(つまり吐血の可能性について調べるということです)。

CTで何か異常が見つかれば、その異常に応じた対応(更なる精密検査、CTによる経過観察など)をおこなっていきます。

出血量によっては血止めの薬だけで様子を見ることもあります。大量喀血の場合は大きい病院でカテーテルの手術をして止血をする必要があることもあります。

少量の喀血の場合は当院でも対応可能です。しかし洗面器一杯を超えるほどの喀血の場合は、大きい病院の受診が望ましいと考えます。判断に迷う場合は一度当院にいらしてから、必要に応じて大きい病院をご紹介することも可能です。

吐血の原因

吐血の原因としては胃潰瘍、食道・胃静脈瘤、胃癌などの病気の可能性があります。いずれの病気もまずは胃カメラでの診断が必要になります。出血量に応じてそのまま胃カメラでの止血処置を行うこともあります。

ピロリ菌がいると胃潰瘍や胃癌になりやすくなります。ピロリ菌がいる場合は内服薬によるピロリ菌除菌が必要です。除菌するだけで胃癌の可能性が下がるというのは画期的ですので、検査をしたことがない方は是非一度検査をお勧めいたします(採血でもスクリーニングの検査が可能です)。

肝臓が悪い方は食道や胃に静脈瘤といわれる血管のコブができてしまいます。これが破裂すると大量出血が起こり、急いで止血処置をしないと命に関わります。

ですので、嘔吐と共に黒っぽい血を大量に(洗面器一杯以上)吐いた場合は、すぐに大きい病院の受診が必要です。判断に迷う場合は一度当院にいらしてから、必要に応じて適切な医療機関へのご紹介をさせていただくことも可能です。

まとめ

「口から血を吐いた」場合についての解説を行いました。

どこから出血しているかによって対応は全く変わってくるのですが、それを見分けるのは容易ではないことが多いです。医師でも判断が難しいですので、ひとまず当院にいらしてからお話をお伺いして適切に対処させていただきます。

出血量や頻度、血の出方や色によって検査の優先度を検討する必要があります。出血量が多い時は緊急の処置が必要になることが多いです。

また、出血が続く場合は肺癌などの怖い病気の可能性がありますので、早めの受診をお勧めいたします。