症状から探す:痰

当ブログでは、患者さんのお困りの症状から、どのような病気が考えられるかについての情報発信を行っております。 今回は痰についてお話しいたします。

痰とは

日々、痰は体(気道)の中で作られています。

呼吸をすると、鼻からのど、気管・気管支を通って、肺の奥の肺胞まで空気が到達します。

乾燥した空気を加湿するために、気管・気管支も湿っています(喉や鼻の粘膜が湿っているのと同様に)。気管・気管支の粘膜から粘液が分泌されることで湿らせているのです。この粘液は、外から吸い込んだ細菌やウイルス・埃などの異物を引っ掛けます。引っ掛けた異物は、気道に生えている目に見えない小さな毛によって体の外にかき出されるようになっています。体ってよくできていますね。

この色んな異物が含まれた粘液を痰と呼びます。日々作られて気が付かないうちに飲み込み、普段はあまり気になりませんが、異物が入ると体を守るための粘液が多くなり、痰が増えたな、と自覚するようになります。

痰が増える原因

風邪をひいたとき(ウイルス感染)肺炎になると痰が増えます。

また、喫煙されている方はタバコの煙(異物)のせいで痰が良く出ますし、過去に喫煙されていた方も異物が肺に入り込みやすい等のために痰が出やすいです。そして禁煙に踏み切られた方も一時的に痰が増えることがあります。これは、喫煙中の方は上の章で書いた気道に生えている目に見えない小さな毛の働きが落ちるのですが(なので肺炎等になりやすいです)、それが回復することで異物をかき出す機能が増えるためです。

喘息の方も、気管支でアレルギー反応が起きており、痰が多くなります。

また、副鼻腔炎がある方は、鼻汁がのどに垂れ込み、咳をしたときにそれが痰となって出てくることもあります。

結核や非結核生抗酸菌症、肺癌等の場合はそれぞれの治療をすることで痰が減ります。

よくある原因

  • 風邪(ウイルス感染)
  • 肺炎
  • 副鼻腔炎
  • COPD、肺気腫、喫煙
  • 気管支喘息、花粉症 等

稀な原因

  • 結核
  • 非結核性抗酸菌症(NTM、MAC)などの慢性気道感染症
  • 肺癌 等

痰の色

痰の量に加えて、痰の色調も変化することがあります。

感染(風邪や肺炎等)があるときは黄色~緑色の痰が出ることが多いですが、実は痰の色で病気を見分けることは難しいとされています。その他の症状や検査によって診断をする必要があります。

COPD、肺気腫をもつ方は普段から透明っぽい痰が出ることが多いですが、痰の量が増えたり、色調が変化し、呼吸がいつもより息苦しくなったときはCOPDの増悪(発作のようなものです。後日詳しく記事にいたします。)の可能性がありますので、早めの受診をお勧めします。

血痰

痰に血が混じるとびっくりしますね。

うっすら血が混じる程度ならよくある症状です。よく咳をしたり、気管支で炎症が起きていると、粘膜が傷つき、少し血が混じってしまうこともあります。

しかし、実は肺結核だったり、肺癌だったり、ということもありますので、風邪症状がないのにいきなり血痰が出た、もしくは血痰が続くという場合には胸部レントゲンやCT検査をお勧めすることがあります。

血痰については以下の記事で詳しく解説しています。

痰は出した方がいい?

痰が自然と口の中にまで湧き上がってくる場合は、その都度出してもいいでしょう。飲み込んでしまっても、胃酸で殺菌されますので害はありません。

喉の奥に痰が引っかかっている時に無理矢理出そうとして「カーッ」としている方もおられますが、これはあまりやらない方が良いと思われます。喉の奥を痛める原因になりかねませんし、出血(血痰)の原因になってしまうこともあります。医学的に痰を(無理にでも)出す必要がある方はほとんどいませんが、どうしても気になる場合は痰を出しやすくする薬(痰切り)を飲むと痰が出やすくなります。

また過去に喫煙していた方や今も喫煙している方は、痰切りの薬を飲むことで肺炎予防になる場合もありますので、肺の状況に応じて検討して行く必要があります。

まとめ

痰は、ウイルスや細菌等から体を守った結果として増えるものです。

喫煙の状況やその他の症状、元々お持ちの病気次第で考える病気や対処法が変わってきます。痰切りだけではなく吸入等が有効な場合もありますので、痰でお困りの方は一度当院にてご相談ください。