風邪(かぜ)について、発熱外来について

当ブログでは、病気についての情報発信を行っております。 今回はいわゆる「風邪(かぜ)」についてお話しいたします。

「風邪」とは

風邪とは、なんらかのウイルスに感染した状態のことです。

「風邪」と聞くと軽い病気のように思われる方が多いかもしれません。確かに99%の風邪は大した事もなく完治しますが、稀に「怖い風邪」もあります。新型コロナウイルスもウイルス感染という意味ではいわば「風邪」の一種ですが、その恐ろしさは皆さんご存知かと思います。

ここでは風邪についてとその一般的な対処法、そして新型コロナについても簡単にお話しいたします。

感染症について

今お話しした通り、風邪というのはウイルス感染の事を指します。ちなみにインフルエンザもウイルス感染という意味では、実は風邪に分類されます。

多くのウイルス感染には(HIV等のごく一部の例外を除き)

  • 数日で自然に治癒する
  • 治す薬がない

という特徴があります。いわゆる風邪薬というのは治す効果はなく、症状を抑える効果しかありません。

よってウイルス感染を疑う場合、風邪薬を飲んでツラい症状をおさえつつ、日にち薬で改善を待というのが基本的な方針になります。漢方を飲んで免疫を頑張らせることで早く治るとする研究結果もあります。

コロナが流行ってからは聞かなくなりましたが、以前は「明日大事な仕事があるから薬や点滴で明日までに治してくれ」とよく言われました。それは残念ながら現在の医学ではなかなか難しいのです。

風邪と抗生物質

「風邪をひいたので抗生物質をくれ」というのもたまに言われます。これも実は、全く効果がありません

「でも抗生物質を飲んだらすぐ治った」という経験のある方もおられますが、それはほとんどの場合、飲まなくても治っていたと考えられます。

ただ、ウイルス感染において大事なことは、二次的に(ウイルス感染に引き続いて)、肺炎のような細菌感染を引き起こす可能性があるということです。細菌感染に対しては、抗生物質が非常に有用です。なので、一旦風邪は治ってきたのに再度「だるさ」や「息苦しさ」が出てきてどんどん悪くなってくる(たとえるなら過去にないほどだるい、等)ようならやはり再度病院受診をされるのが望ましいとは思います。

ここまで読んで

「それならやっぱり念の為抗生物質をはじめから飲んでおけばいいのでは?」

と思われる方もおられるかもしれません。

しかし、抗生物質には副作用が出ることが結構あります。やはり効き目がないことが多い風邪に対して飲むには副作用が勝ちすぎると考えられます。

そしてもう一点。

抗生物質を簡単に飲んでいると、そのうち効かなくなってくることが知られています。「耐性菌」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。耐性菌には特殊な抗生物質が必要になりますが、「耐性菌=薬が効かない菌」かどうかは治療開始時点ではわからないので、本当に必要な時(肺炎になったり)に効かなくてさらに重症化したり命に関わることもあります。これを防ぐためにも、抗生物質を簡単に飲むのは避けたほうがいいのです。

ただし、肺炎を繰り返している方や、タバコを吸っておられる(おられた)方などは、抗生物質を早期から投与せざるを得ない場合もありますので、お一人お一人の状態やご希望にあわせて治療を考えていきます。

新型コロナウイルスに関して

もう皆さんもよくご存知とは思いますが、簡単に説明させていただきます。

やはりコロナウイルスもウイルスの一つですので、大きいくくりでは風邪の一種です(といいますか、通常の風邪の一部はいわゆる従来型のコロナウイルスが原因です)。よって、ほとんどの方は、万一新型コロナウイルスに感染しても、通常の風邪のような経過を辿って自然治癒します。オミクロン株は特にそういう方が多いとされています。

ただやはり新型コロナウイルスは従来の「風邪」と違い、重症化する確率は非常に高いです。2019年に全国でインフルエンザ警報が出た時ですら、ICU(重症患者さんだけが入る集中治療室)を感染症患者さんが埋め尽くすということは全くありませんでした。

若い方でワクチンを接種していれば、重症化する確率は確かに低いかもしれません。しかし、高齢者や基礎疾患のある方にうつってしまうと命に関わることもありますので、やはり十分な注意が必要です。

新型コロナウイルスが他のウイルスと少し違う所は、ウイルス自体が、この重症化≒肺炎を引き起こしやすい点です。そして「治療薬」がある点も他の風邪と違う点です(ラゲブリオ、パキロビッド等)。ただしこれらの治療薬は、使える患者さんが決まっています(症状や検査値によって効果に違いがあるため)。

いずれにせよ、万一新型コロナに罹患したとしても、だるさや息苦しさがどんどん悪くなってきていないのであれば、深刻な心配はしなくていいと考えられます。万一だるさや息苦しさが悪くなってくるようなことがあれば、近隣の大きな病院を受診ください。特に基礎疾患(生活習慣病や呼吸器の病気など)をお持ちの方は重症化の確率が高いですので、十分ご注意ください。

まとめと当院での発熱外来について

今回は風邪についての考え方や治療についてお話しいたしました。

基本的に風邪は、症状を抑える薬を飲みつつ自然治癒を待つというのが方針になります。

オミクロン株は「いわゆる風邪」のような症状の方が多く、重症化の確率もデルタ株に比べれば低いと言われています。しかし高齢者や基礎疾患のある方ではやはり一定数命に関わることもあります。

今「風邪症状=発熱、のどの痛み、咳など」があるだけで診察をしてくれない病院が少なくありません。当院は、地域の内科・呼吸器クリニックとして、どのような症状の方でも診察をするべきと考えておりますので、診察拒否をすることはありません。

しかし一方で、当院に通院中の方は高齢者や基礎疾患をお持ちの方ばかりです。

風邪症状のある方をしっかり診察しつつ、高齢者や基礎疾患をお持ちの方をお守りするためにも、当院の発熱・風邪外来は完全予約制で動線を完璧に分けて行うつもりです。

5月9日からの発熱・風邪外来は駐車場のプレハブ内で行いますが、8月の増築後は専用の診察室を設け、そちらで診察させていただきます。

ご不便をおかけ致しますが、皆様の健康のためにどうぞご協力をお願い申し上げます。