症状から探す:咳(せき)③〜3週間以上続く咳

当ブログでは、患者さんのお困りの症状から、どのような病気が考えられるかについての情報発信を行っております。

今回は咳についての続きで、3週間以上続く遷延性の咳と慢性の咳についてお話しいたします。

遷延性の咳、慢性の咳

  • 気管支喘息、咳喘息
  • アトピー咳嗽
  • 副鼻腔炎
  • 逆流性食道炎
  • 百日咳

3週間以上続く咳となると、感冒後咳嗽(感染にともなう咳)以外の疾患による咳嗽の割合が増えてきます。

怖い病気で言えば、結核肺癌が挙げられます。その他の咳がでるような疾患がないかもふくめて、画像検査(レントゲンやCT検査)を行います。初期の結核や肺癌はレントゲンだけでは見つからなず、CT検査をして初めて見つかる場合も少なくありません。(当院でも2022年8月末をめどにCT検査を導入します!)

しかし頻度が高いのは、気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽、副鼻腔炎、逆流性食道炎による咳で、原因の80%以上を占めます。

気管支喘息、咳喘息

気管支喘息では咳き込むとヒューヒューやゼーゼーというような音が聞こえます。気管支が狭くなることで咳よりも息切れを訴える方が多いですが、夜間や朝方の咳は喘息に典型的な症状です。(気管支喘息についてはまた別の記事で詳しく解説する予定です!)

一方、名前の似ている咳喘息は、気管支喘息とは異なり、ヒューヒューという音は聞こえず、痰の絡まない空咳が特徴です。こちらも夜間や朝方に多く、季節性にみられることもあります。特徴的な聴診所見や、検査所見がないため、なかなか診断に至らないことも多くあります。

アレルギー体質の方が多くみられ、前回のブログで紹介したFeNO検査で高値となることが多いです。

気管支拡張剤の吸入で症状が改善することが特徴的です。

無治療のままだと一部の方は気管支喘息に発展することがありますので、吸入でしばらく治療することをお勧めしています。

アトピー咳嗽

咳喘息同様、アレルギー体質の方に多くみられます。皮膚のアトピーとは無関係に起こります。

咳喘息よりも喉の奥の違和感(イガイガ感)が多くあります。気管支にアレルギー性の炎症が起こり、咳が普段より出やすくなってしまう疾患です。アレルギー性の病気ではありますが、FeNO検査は低値となることが多いです。

治療は粘膜のアレルギーを抑える抗ヒスタミン薬が有効です。咳喘息とは異なり、気管支拡張剤が効きにくいです。

副鼻腔炎

副鼻腔という顔面や頭蓋骨にある空洞に膿(うみ)がたまる疾患です。蓄膿と聞けばピンとくる方もおられるでしょうか。知らず知らずにうちに副鼻腔炎をもっている方は少なくありません。

副鼻腔は鼻とつながっており、膿が鼻の中へ流れると、鼻から喉へ膿が流れることが刺激となり、咳が出やすくなります。咳喘息や逆流性食道炎とは異なり、咳とともに痰を伴うことが多く、寝そべったときに鼻汁がのどの奥に垂れ込む感じ(後鼻漏)を自覚される方もいらっしゃいます。

膿を外に出しやすくするような薬剤で様子を見ることが多いですが、症状がかなり強い場合は手術をすることもあります。

逆流性食道炎(GERD)、咽喉頭逆流症(LPRD)

胃酸が逆流することで起こる病気です。胃酸は通常胃の中にとどまりますが、胃の入り口が何らかの理由で緩んでいる場合、胃酸が逆流し、食道に炎症を起こします。これを逆流性食道炎(GERD)と言います。逆流が食道を超えて喉まで逆流することを咽喉頭逆流症(LPRD)と呼びます。

逆流した胃酸が喉を刺激し、咳が誘発されます。食後に咳が出やすい、胸やけがする、という症状が伴っていれば典型的ですが、症状を伴わない方もいらっしゃいます。診断は胃カメラで逆流所見があるかをみることで行いますが、試しに胃薬を飲んでみてその効果をみることで診断に結びつける場合もあります。

治療は胃酸を抑える胃薬や、生活指導(脂っこいものを控える、胃酸が逆流しないように食後すぐ横にならない、肥満の是正など)が必要になります。

百日咳

強い咳が100日間(長期間)続くから百日咳という名前がついています。4−6月に多いですが、一年中かかる可能性のある病気です。頑固な咳が続くにもかかわらず、上の病気のどれもが当てはまらない場合、百日咳の可能性があります。百日咳は採血で診断することも可能なのですが、実際に検査をおすすめすることはあまりありません。

なぜかと言いますと、百日咳で強い咳がでているタイミングではもう治療薬(抗生物質)は効かないからです。咳が出る少し前に風邪のような症状(喉の痛みや鼻水、発熱など)が出るのですがそのタイミングでは抗生物質が効きます。しかしその時点では風邪と見分けが全くつかないので、抗生物質を出すことが難しいのです(風邪に抗生物質がおすすめできないのは当ブログの風邪のページで解説したとおりです。一応、LAMP法といわれる早期診断のための検査もあるのですが、精度が低いという難点があります)。

ただし小児の患者さん(特に5歳以下)では咳のしすぎで嘔吐したりすると窒息に繋がりかねないこともありますので、咳が出てしまっていても早期であれば抗生物質をお出しすることもあります。

百日咳かもしれない大人の方に対しては、咳止めをしっかり飲んでいただいて100日間耐えていただくことがほとんどです。もちろん、その時点での特効薬はなくても、咳の原因を知りたいという方には採血で調べることも可能です。

まとめ

今回は咳が3週間以上続く遷延性、慢性の咳についてお話しいたしました。

気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽、副鼻腔炎、逆流性食道炎、百日咳や、場合によっては肺癌結核などの怖い病気の可能性が考えられます。

患者さんそれぞれの症状や喫煙等の状況に併せて、適切に検査や治療を組み合わせていく必要があります。

咳が続いてお困りの方は、一度当院へお越しいただければと思います。